遠い太鼓 [PW] [book]
こちら、著者が80年代後半に南欧に住んでいたころのエッセイです。
その意味では、紀行文というよりむしろ滞在記に近く、
その分、日々の生活感がより強く感じられます。
本作は、500ページを超える分量がありますが、こちらにも書いたように、
通しで完読すればもちろんのこと、それぞれのパートを流すだけでも、
その土地土地の空気感に包まれることができます。
また、著者は、「ノルウェイの森」や「ダンス・ダンス・ダンス」をこの滞在中に書いています。
なぜ、これらの作品を日本ではなく、この地で書かなくてはならなかったのか、についても、
本作の中でも示唆があるのですが、結果として、これら作品と当時の日本の空気感の間の
乖離が、本作を通じて、ある意味、必然であることがわかるのも興味深いところです。
➣ My Favorite Things